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~連続官能小説 鼓膜で感じさせて~ 第一話-02「紗香の恋活」

2017.03.29

感じる女性

長く付き合って来た元彼と別れてから、ここ二年ほどのあいだ、男日照りの紗香である。

紗香もアラサーだったし、付き合っていた男との結婚を意識しないではなかった。正直、付き合いも長いものだから、いつかは結婚するものと踏んでいた。おそらく相手も途中まではそうだったはずだ。

では何で別れたのかというと、ズルズルとぬるま湯に浸かるかのごとき時間を過ごしすぎて、メリハリを失ったというか、タイミングを逸したのだった。結局それはつまるところ、お互いの本当の必要性が分からなくなってしまったとも言える。

ちょっとのズレのつもりが、本当は決定的な隔たりとなって二人の間にそびえていたのを、五年も気付かずにいた。いや、気付かない振りをし続けたという、今思えば何とも痛々しい話なのだ。

もし一度別れて、やっぱりかけがえのない大切な人だった、とでも気付けるのなら、荒治療的に互いの存在の大きさを再確認出来た、という美談にもなろうが、別れまでうやむやで、残念極まりない感じに終わったのだった。
悲しい、辛い、とかいう心に刺さるような感情とはちょっと違った。今まで存在していたものがなくなって、ちょっと寂しいくらいの、うすら寒い希薄な感情が時折もたげるくらいだ。そんな関係だったことを改めて認識させられて、さらに情けなさに拍車をかける。

長過ぎた春を、恋が愛に変わったと、勝手に美化し錯覚していただけだった。本当はどんどん色褪せて、愛に変わるずっと前に、恋の成分さえフェードアウトしていたのも気付かなかったなんて。
本当はどこかで薄々感じていたのかもしれないが、お互い別れるエネルギーも勇気もなくて、惰性でしがみついていた。互いにこんな不幸なことはないだろう。五年もの若さを費やして気付くとは。

それ以来、なんだか男の人とは縁がない。もう一度向き合える人と出会えるような気がしないのだ。それに紗香自身がやたらと臆病になっている。三十歳を目前にして、もう一度別れる結果になったら、きっと立ち直れない

だが、枯れっぱなしというのも問題だとは思っている。まだギリギリ二十代なのだから。その証拠に体は正直だ。欲求不満は素直に現れてくる

電話口でバリトンボイスに欲情してしまったという、あの事件以来、妄想スイッチが入らないように、女として潤いを再び!と、努めて休みには恋愛ドラマや恋愛映画のDVDを見るようになった。だが、不幸な恋愛もどきに長い間さらされて、紗香はもう自分がどうやって恋愛をしていたかさえ思い出せない

だから休みに恋愛映画を見ても、ビール片手につまみをかじりながら、
「おいおい、そんなことあるはずないじゃん!」
なんて突っ込んでばかりいる。

切ない場面で号泣出来れば、それなりに心がすっきりできるだろうに。脳が恋愛に不感症になっているので、ストレスがたまる。心がモヤモヤしたもので一杯になっているのを改めて認識する。紗香の中にじっと降り積もって来た未消化な感情、満たされないもの。それは、ここ二年ほどのあいだ男日照りの欲望も一緒に含まれた形だ。恋愛不感症なのに、体は妙に敏感になってしまっている

寝る前に、恋愛映画で見た濃厚なキスシーンを思い出すと、やたらと体の芯が火照って来る。耳もとで囁かれる塚原のバリトンボイスを思い出す。ゆっくりと耳を、鼓膜を、なぶるように甘く囁くバリトンが、紗香の脳をだんだんとピンク色に染めていく。

彼の唇が、紗香の耳たぶを甘噛みし、耳の縁を舐める。ねっとりと、そしてわざとらしく唾液のねちっこい音を立てながら。その舌がまるで生き物のようにゆっくりと焦らしながら、首筋を伝い鎖骨の辺りまでおりてくる。しっとりとした唇と舌が、紗香の薄い皮膚の柔らかさを楽しむように、含み、ねぶる。

考えただけで背中はゾクゾクしっぱなしで、紗香の芯からジュンと熱い蜜がしたたるのがわかる。もじもじと太股をこすりあわせる動きをしながら、ブラトップの裾からそっと手を入れ、ゆっくりと臍の辺りから撫でるように、肌に触れるか触れないかのソフトなタッチでせり上がる。その手を塚原の手だと想像して。

塚原さんは女性を抱くとき、どういうふうに触れるんだろう?

紗香の指先が胸の頂きに触れる。プックリと膨らんできたそれをつまみ、転がす。初めはゆっくり、だんだん強く。それから音楽でも奏でるようにはじく。強弱をつけて、そしてさらにちょっとだけ乱暴に。
興奮で固く膨らんだ赤い実は、強弱の刺激を全て快感に変換して、紗香の脳を痺れさせる。

「んっ……ぁん」

あまりの快感に、思わず鼻にかかった甘い吐息が漏れる
きっと塚原さんは膨らんだ私の敏感な赤い実を、巧みに舌で舐め、転がし、唇も使って責め立てるに違いない。もしかしたら甘噛みもするかもしれない。
そう思うと、中からトロリと密が溢れた。もう我慢出来なかった。

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右手をそっとショーツの中に差し入れ、やわやわと優しく、茂みをゆっくりかき分ける。きっと塚原さんならそうするはず。前の男とのことはうろ覚えだけれども、やたらとまだ見ぬ塚原に、こんな風な勝手な想像ばかりが先行する。
そしてゆっくり私の太股を割って……太股の肉感を楽しみながら、蕾を隠した花弁に舌を伝わせて……こんなふうに?

紗香の指が花弁の継ぎ目を伝う。快感への期待に、もう溢れんばかりに潤って、密壺からこぼれてきた密が、紗香の指にまとわりつく
塚原さんが……舌で割れ目をなぞりながらたっぷり焦らした後に……花弁を剥いて……私の花芯を舌で愛撫して……
紗香の指が生き物のようにうごめく。どんどん密が溢れてくる。臀部の方へも伝って、ショーツにシミを作る。火照るからだは薄紅色に染まり、熱病に冒されたように求めてしまう。快感に身を任せると、火照った下半身が溶けて行きそうだった。
花弁を剥いて、熱く充血した花芯を指の腹で弄ぶ。蜜の粘性が滑りを加速して、さらにジンジンと敏感な快感をダイレクトに紗香の脳へ伝える。

「あぁん、気持ちいぃ……」

指の動きは繊細に、小刻みに、それでも大胆さと強さを増す。紗香は知らぬ間に快感の揺らぎの中で、大きく太股を開いた恥ずかしい格好になっていた。
クチュ、クチュクチュ……粘りのある卑猥な音が紗香の耳を犯す。はしたないとわかっていても、興奮と快感を一気にトップギアへ誘う。

「ん……んっ!んんっ!!」

ビクビクビクっ、と下腹部の深い部分で強い痙攣が起こり、ぎゅうっと中が引き込むように強く収縮する。エアーセックスだから搾り取る相手もないのに。さらに律儀に、女の性に忠実に貪欲に絞りとろうと、収縮し痙攣し続ける。女である自分の象徴のようなこの子宮が、紗香には愛おしかった。
あとはもう覚えていない。心地よい満足の中で、眠りに溶けるように落ちて行った。

独り寝の慰めは、虚しいといえば虚しいのかもしれないが、体は正直なもので、肉体的な満足とほどよい筋肉運動の後で、ぐっすりと心地よい深い眠りが得られるのだった。おかげで週明けに大抵お肌はツルツルだ。ある意味紗香の女の潤いは、部分的にだが満たされてはいた。

※次回短編小説は4/5(水)更新です。お楽しみに!

★【連続官能小説】>>
『鼓膜で感じさせて 第一話「声の誘惑」』
⇒『連続官能小説 鼓膜で感じさせて』まとめ読み!

★もっと読める!短編官能小説>>
『「官能小説」に関するまとめ』はコチラ!


▼ライター:緋鹿 折さんプロフィール

緋鹿 折さん

某国立大学理学部卒業。医学博士。

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