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~連続官能小説 鼓膜で感じさせて~第二話-01「思いがけない幸運」

2017.04.05

照れる男女

そんなある金曜日に、紗香は福田に呼ばれた。

「樫山君、今日ちょっと手伝ってくれないかな?」
「……どういったご用件でしょうか?」
ラルム薬品さんと十四時から打ち合わせがあるんだよ。応接室がいいんだけど、その時にお茶を持って来て欲しいのと、あらかじめプロジェクターの準備と資料のコピーを頼みたいんだ。部数は一応七部ずつで頼めるかな?」
「わかりました。今、応接室の確認取ります。もし空いてないようでしたら会議室のどこかでいいですか?」
「いいけど、あんまり広いところじゃないほうがいいね」
「人数はどのくらいですか?」
「あちらは一応二人来ると聞いてるけど、三人になるかもしれないそうだから、こっちの人数と込みで六人ね」
「わかりました。じゃ、すぐに準備します」

紗香が一礼して立ち去ろうとした時、
「あ!そうそう、塚原君も来るから、この前の失礼を謝っておきなさいよ」
と福田が言った。

「え!?」

紗香の心臓が跳ねる。
げえーー!!バリトンが来る!
心の中では大騒ぎだ。

「え!?じゃないでしょ。会わせるから、ちゃんと謝ってよ」
福田はこういう所が律儀な人なのだ。だが、からかうように笑っている。

「……は、はい」

こんな会い方はしたくないのに。そう、今こそ穴が会ったら塚原さんの前で入りたい。紗香の頭の中で、甘く低いバリトンの囁きがグルグル回る。必要以上に心臓がバクバクとうるさく鳴る。

「じゃ、応接室の準備と、資料頼んだよ」
福田は軽い口調で言うが、紗香の気持ちは重かった。

「……はい」

しぶしぶ答えるしかなかった。

打ち合わせは滞りなく済んだようだった。午後五時も回るころ、応接室の方から紗香の居る部署の方へ、聞き慣れない声も混じる数人の声が近付いて来た。
会議中、福田の言い付け通りにお茶は運んだが、どれがバリトンなのか物色している暇はなく、けれど耳が自然と声を探していた。結局わからなかったのだが、そんな自分に紗香は気付いて赤面する。

「樫山君、ちょっと」

福田に呼ばれた。急ぐ必要もないのに気持ちは大いに慌てている。やっとのことで廊下に飛び出すと、福田と談笑するスーツ姿の若者が、にこやかに微笑み、こちらを向いて軽く頭を下げた。

「こちら、ラルム薬品の塚原君」

紗香の目が一瞬点になった。頭の上にたくさんの「!」が飛ぶ。
目の前に居るのは、ほどよく日焼けした短髪の、見るからに体育会系の身体のガッシリした青年だったからだ。童顔で目のくりっとした、いかにもひとなつっこそうな弟分という感じで、微笑む口元から清潔感を際立たせる真っ白い歯がこぼれている。例えて言うなら……高校球児みたいだと言えば分かりやすいか。さわやか過ぎて、眩しいくらいだ。

勝手に細身で長髪の優男だと思っていたのだが、想像と全然違っていた。紗香は却ってそのギャップにやられた。

「……その節は……どうも、すみませんでした……」

消え入るような声で紗香はつぶやく。

「いえいえ、たいしたことではないのに、福田さんが大仰なんですよ。こちらこそ、すみません」

そこへ福田が割って入る。
「いやいや、そうはいかんよ。窓口は社の顔なんだし」

「……すみません」
福田は紗香を塚原に直接謝らせると、一仕事終えたとばかりに満足そうに、紗香の肩をぽんぽんと叩いてその場を去った。

「……あのう……」
塚原が口を開く。

「はい?」
下を向いていた紗香が顔を上げる。

「大丈夫だったですか?」
「え?」
「この前、電話口でちょっと様子が変だったから、具合でも悪いのかと」
「あ、いえ、そんなことはないんですけど」
「それはよかった」

本当に安堵したように紗香を見つめる塚原が眩しい。直視出来ない。「えっと、樫山さんって、ずっと窓口ですよね?いや、入社してすぐは営業していたんでしたっけ?」

いきなりの質問に面喰らう。
「何でそんなこと、知っているんです?」
「……すみません。気持ち悪いですよね?いきなりそんなこと聞かれたら」
「いえ、気持ち悪いとかそういうのは全然ですけど、でもちょっとびっくりしました」

塚原の顔はぱっと光が差したように明るくなって、不思議そうに見る紗香の顔を嬉しそうに見ている。そしておずおずと、白状し始めた。

「……僕、ずっと前から、えっと……ここの担当の先輩について来ていた時からあなたのこと……素敵だなと思っていて……色々聞いちゃいました

「えっ!?」
紗香はあまりのことに真っ赤になって言葉を詰まらせた。意外だった。

「それで電話にあなたが出てくれないかなと、ずっとそればかり……といっても、俺が直接電話することは最近ここの担当を任されてからですけど……」

予想外の展開に、紗香の心臓がはじけんばかりに高鳴った。
「ほんとは今日も福田さんにお願いして、樫山さんに会わせてもらったんです。本当は電話での言い間違いなんか、口実なんです。ただあの時、樫山さんの様子が変だったからちょっと心配で……」

まさか、あなたのセクシーボイスに欲情していましたとは言えない。だが、紗香は目の前の幸運にクラクラした。

「えーっと……何て言えばいいのか……」
とっさにはうまい言葉が出て来ない。

「……やっぱり……ドン引きしましたよね?こんなこといきなり言われちゃ、誰でもビビりますよね……ごめんなさい……」
さわやかイケメンがうなだれた。かわいそうな子犬よろしく、塚原の垂れた耳が今にも見えそうだ。

ここではかわいこぶって恥ずかしそうに見せていればいいのか、それとも思いがけない幸運に飛びつけばいいのか。一瞬脳内で迷っているうちに、塚原が勢いよく頭を下げた。

「いきなりで済みませんでしたっ!今後とも、よろしくおねが…」
「ちょっと待って!えっと、そんなんじゃなくて!そうじゃなくて!」

紗香は、とっさに顔の前で右手の平をバタバタと横に振った。

「あの!実は私もなんです!」

割って入り、言いかけて口をつぐむ。言うべきか、言わざるべきか。塚原が不思議そうに紗香を覗き込んだ。ワントーン落とした声で、こちらも白状するしかなかった。

「実は私も……塚原さんのこと、気になっていたんです……素敵なお声だし……」

塚原は目を見開いた。
「え!?本当ですか?嬉しいなあ!」

照れる男女

それからゆっくりとしたモーションで塚原の口角が上がり(紗香にはそう見えた)、白い歯がこぼれた。背の高い彼が、体を折るようにしてこそっと紗香の耳元で囁いた。
二人で飲みに行きませんか?この後……もっと話したいんですけど

痺れるバリトンが耳から流れ込み、脳を揺らす

今、紗香の全身は性感帯だ。
今ならきっと、この男に手を繋がれただけで、上り詰めることが出来そうな気がする。

「まだ仕事、残ってるんですけど……」
「そうですか、じゃあ……」

そう言って取り出した一枚の名刺に何か書き込んで、紗香に渡した。

「俺、今日は直帰なんで待ってます。終わったらこの番号に電話して貰えますか?」
「……はい」

夢のような展開でいまだに信じられない。その微妙な間に、塚原は自分への不信とでも思ったのか、ちょっと顔を曇らせた。それから意を決したように紗香を真っ直ぐに見つめて言った。

いつまででも、あなたが来るまで、待ってますから……俺

※次回短編小説は4/12(水)更新です。お楽しみに!

★【連続官能小説】>>
『鼓膜で感じさせて 第一話-01「声の誘惑」』
『鼓膜で感じさせて  第一話-02「紗香の恋活」』
⇒『連続官能小説 鼓膜で感じさせて』まとめ読み!

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『「官能小説」に関するまとめ』はコチラ!


▼ライター:緋鹿 折さんプロフィール

緋鹿 折さん

某国立大学理学部卒業。医学博士。

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