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~連続官能小説 鼓膜で感じさせて~第三話「逡巡からの一歩」「突然の訪問」

2017.04.19

紗香を抱きしめる塚原

~第三話-01「逡巡からの一歩」~

それからずっと塚原からの連絡は来なかった。
心当たりはなくはない。気持ちはOKなのに、裏腹にも体が拒否したのを、塚原にすかさず見破られたという自負はある。

半端にキスは受け入れて期待させておいて、付き合ってくれと言われて躊躇されたら誰だって傷つくわ!

自分に何度も突っ込みを入れ、どうすればよかったのかと自問自答を繰り返す。でも嘘はついていない。
怖いのだ。あと一歩が踏み出せない。今までの経験が、塚原との距離を縮めるのを戸惑わさせる。それに愛される自信もない。だが、塚原にはいずれにせよキチンと答えねばならない。

紗香がそうやって悶々と逡巡している間、たまたまなのか職場でも塚原を見かけなくなった。

女の心はあまのじゃくなもので、しょっちゅう目につくものはあまり気にもかけないが、突然見かけなくなると、気になってしょうがなくなるものだ。

そんな折、ラルム薬品の塚原の先輩が福田に会いに来ていた。

あれ?塚原君は来ないのかな?
紗香は不思議に思った。

もしかしたら、私とのことがあったから……?そんなわけないよね、さすがに。仕事だもんね。そんなこと考えるの、私が自意識過剰だよね?
頭の中でグルグル考えながら、ラルム薬品の塚原の先輩と話す福田を、ぼんやりと眺めていた。

「あ、樫山さん!」

塚原の先輩という男が、紗香の名前を呼んで手を挙げ、近付いて来た
名前は何だったか……たしか、松木だったか松本だったような……?
頭の中で思い出そうとしている間に紗香のそばに来て、一方的に話しかけられた。

「今日は塚原の代理なんです。塚原、あいつインフルで先週からぶっ倒れちゃってて」

あまりの情報に驚いたのだが、他人の前では素っ気ない態度しかとれない。

「……あ、そうなんですか」

今度はまわりに聞こえないように声を落として、『松なんとか』は言った。

……その様子じゃ、塚原はフラれたんですね?
「え!?」
「あれ?塚原と飲みに行ったんじゃなかったんですか?」
「……ええ、行きましたけど……」

この人は何処まで知っているんだ?塚原君、一体何処まで喋ってるのよ!
腹立たしくなった。心配していたのに、自分とのことを他人に喋っていて筒抜けだとは!

「えーと……」

『松なんとか』は躊躇しながらも話をやめない。まるで今日はこれを言いに来たと言わんばかりだ

「本当は僕が樫山さんにこんなこと言うのはフェアじゃないってわかってて、そのうえでこんなこと言うのはどうかって思ってはいるんですよ……でも、塚原はいいヤツですから、もし問題ないならお試しでも何でもいいんで、付き合ってやってもらえないですか?それから決めてもいいんじゃないですか?」

「はあ……ええ、まあ……」

歯切れの悪い言葉しか出て来ない。他人が介入することではないはずだ

「ひょっとして、もう長く付き合ってて結婚を考えている男性とかいるんですか?それなら余計なお世話ですよね?塚原に諦めさせなきゃいけないな」

どうしてあなたがこんなことまで口を出すんだよ!といってやりたいのをぐっと飲み込む。

「いえ、いないですけど……でも……」
「じゃあ、塚原嫌いですか?メシ食いに行ったんでしょ?どうでしたか?」
「……素敵な男性だとは……思います」
「それなら早い!これ、塚原の家の住所だから、見舞いに行ってやってくれませんか?うちの嫁が行ってやるって言ってるのに、頑にあいつ拒否るんですよ。俺だって電話でけんもほろろ。心配してやってるのに、あいつは頑固でテコでも動かない。ほかの人に感染(うつ)したくない、の一点張りで」

そう言って握り締めていたらしいクシャクシャのメモを、紗香の前に差し出した。

「……それで私……ですか?」
「塚原はあなたにずっと片思いだったから……あ、これバラしたって塚原にバレたらヤバいかな?まあ、いいか……でも、きっとあなたなら大丈夫だと思うんです。でも確かに勝手で無理な押しつけだとは思います。でももし、かわいそうだと思うなら、ちょっとだけでも、戸口からだけでも、様子見にいってやってくれませんか?」

自問自答しながらも、せわしなくしゃべる。
「でも感染(うつ)したくないって言うなら、私でもダメなんじゃないですか?」
「お願いします!樫山さんに感染(うつ)るといけないから、生存確認だけでもいいので……迷惑だということは百も承知です。無理にとは言える立場ではないこともわかってます!」

さらっと言ったけど、生存確認って……いくらなんでもひどくない?

紗香は顔をしかめた。
『松なんとか』は、いきなり土下座をしそうな勢いで、顔の前で大げさに手を合わせ、紗香の前で頭を下げた。まわりも何事かと紗香の方を見る。勿論福田も状況が分からないと言ったふうに怪訝な顔でこっちを見ている。

やたらと押しが強い。ここまで言われて無下に断るなんて、人でなしになってしまう。紗香も正直なところ、塚原のことが心配ではある。

「……わかりました」

静かな声でそういうと、『松なんとか』の持っていた、塚原の住所を書いたメモを受け取った。何だか釈然としない。

こういう恋愛の手前みたいなデリケートな時期に、それも部外者に、土足で入り込まれた上にごり押しされるのは、いい気がしないどころかむしろ嫌な気分しかしない

静かに考えた上で決めたかったから、何だか水を差されたみたいで、気分を害した。なかったことにしたいくらいだった。
それは子供じみたイチャモンのようなものだ。わかってはいる。今まで時間があったのに少しも決められなかった。もっと時間があったとしても、それは同じだ。塚原が連絡をくれないまま、こんなふうにたとえ乱暴でも背中を押してくれなかったら、このままフェードアウトしてしまっていたかもしれないのだから。

~第三話-02「突然の訪問」~

塚原の家は思いのほか紗香の家から近く、駅ひとつ隣の町だった。塚原がそんなに近くに居たなんて、いちいちそんなことにも驚く。
まずはいきなり訪問する前に、電話連絡をするべきだろう。でも何と言えばいいのだろう?

あらかじめ連絡をしても、感染(うつ)るといけないから、という理由で私も断られたら?そんなことになったら、結構傷つくなあ……

またまた考え込んでしまう。こんなふうに考え込んでいるうちに、塚原がインフルエンザから復活したら、この好機を逃してしまう。
でも、わざわざ病気に漬け込んでと思われないだろうか?ずるい女と思われないだろうか?
ぐるぐる考えていても、もし塚原が家の中で虫の息だったりしたら、と思うといても立っても居られない。

結局、塚原への心配の方が勝って、その日の帰りに途中下車して塚原の家に向かった。
状況がわからないから、とにかくプリンやヨーグルト、スポーツドリンク、お粥のレトルトなど、思いつくかぎりの病人が欲しそうなものを、最寄りのコンビニで買い込んだ。
大きくふくれたレジ袋をガサガサさせながら、塚原の部屋の前に立つ。表札には、少し角張った癖のある見覚えのある字で「塚原」と書かれていた

チャイムを押す指が震える。何度もためらって、やっとのことで押す。
インターホン越しに咳が聞こえてから、「はい」と濁ったバリトンではあったが、塚原の声がした

「……樫山です」
「ぐえっ!?」

インターホン越しにカエルが潰れたような声が聞こえた。紗香の訪問を予想だにせず、相当慌てているらしい。ドタドタと動き回る気配がする。
紗香は独りでクスクス笑った。

女性を抱きしめる男性

バッと戸が開き、マスクをした塚原がぬっと顔を出した。グレーのスウェットの上下を着ている。

「わざわざ来てくれたんですか!?」

紗香は黙って目の前にレジ袋を突き出して、ガサガサと振ってみせる。

「病気ってしてみるもんだなあ……いいこともあるんだ……」

感動していると言わんばかりの塚原の台詞が可笑しくて、思わず笑ってしまった。塚原もつられて笑い出す。

「寒いから、入れてもらえる?」
「え、でも、俺インフルですよ?感染(うつ)りますよ?」
「マスク持って来たし……塚原君、インフルになって何日目?」
「もう五日は過ぎてますけど……会社からは大事とって落ち着くまでは来るなといわれているので」
「じゃ、大丈夫でしょ」

バックからマスクを取り出し、さっと装着する。

「でも……樫山さんに感染(うつ)したくないんだけど」
もし感染(うつ)ったら、塚原君が看病してくれる?
「え?え?勿論ですけど、俺でいいんですか?」
「うん。じゃ、お邪魔していい?」
「はい……汚いですけど……」

塚原がスッとドアを開けて招き入れた。

「お邪魔します……これ」

病人への差し入れを塚原の目の前に突き出し、ニッと笑った。その途端、紗香は手に持っていたものを取り落とした

何が起こったのか分からなかった。
塚原が急に紗香を抱きしめたのだった。長身の体を少し前屈みにして、紗香の背中にそっと手を触れている。まるで壊れものを扱うかのように、包むようにやさしく、そっと

女性を抱きしめる男性

ふんわりと、かつて嗅いだことのある男の体臭が体温とともに薫った。

「あ、ごめんなさい!俺、風呂入ってない」
急に塚原が体を離そうとするが、紗香はそのまま塚原のスウェットに顔を寄せてくっついていた

「……大丈夫。でも元気そうで、ほんとによかった……」

ほっとして、ため息みたいな一言が自然と出て来た。塚原はぎこちなく体を寄せて、もう一度紗香を抱きしめ直した。
しばらくそうしていたが、甘い雰囲気をぶち壊したのは紗香のほうだった。

「えっと……せっかく治って来たのに体が冷えると悪いよ。寝た方がいいよ」

現実に引き戻し、紗香は塚原にベッドに入るように促した。

「えー、今それ言うんですか?」

塚原は残念そうに渋々布団に潜ったが、ベッドから台所に立つ紗香の後ろ姿を、ニヤニヤしながら眺めていた

湯気の立つ卵を落としたお粥に、プリン、ヨーグルト、スポーツドリンクを添えて、塚原の前に並べると、

ぐぐう!ぎゅるるる!!

ちょうど大きく塚原のお腹が鳴った。恥ずかしそうに下を向く。

「どうぞ、召し上がれ。とにかく体力回復しなきゃ。どうせ食べてないんでしょ?」
紗香はいつの間にかマスクを外していて、満面の笑みで塚原の近くに座った。

「……俺、こんなに嬉しいこと、今までなかったです……」

潤んだ目で塚原が紗香を見つめた。塚原の熱っぽい視線に、紗香の体温も少し上がるのを感じる

今日は病人の看病なんだし……
そう思い直して言葉を発するが、声が少し上ずってかすれる。

あたたかいうちに、食べて……

紗香は口に出してみて気がつく。まるで自分を食べてと言っているみたいに思える。恥ずかしくて、体の芯から火照って来るのが分かる

それを知ってか知らずか、塚原の目がじっと紗香を見つめている。
しばし無言で見つめ合っていた。

塚原の顔が近付いて来て、そっと唇が重なる

ああ、この柔らかさ、知ってる……
心地よくてぽってりとした、思いのほか柔らかい塚原の体温を伝える唇を。
それから塚原は紗香の頭をそっと包むように大きな手で支えると、顔を交差してぴったりと唇を隙間なく塞いだ。

それからは無我夢中だった。塚原が熱い舌を差し入れ、紗香を舐め尽くさんばかりにねっとりと口内を犯して行く。それがまるで塚原の所有印のようで、紗香には嬉しかった。紗香もその舌に答えるように舌を動かす

こんなに余裕なく、塚原が求めてくれるのも、自分が塚原にとって唯一無二の存在だということを証明しているようで、嬉しかった。

そのままそっと塚原は紗香を押し倒し、紗香の頭を挟むように両腕をついた。
じっと塚原は紗香を、紗香は塚原を見つめた
急に塚原がはじかれたように起き上がった。

……ちょっと待ってて下さい。俺シャワー浴びて来ます!

慌ただしく浴室に消えた。
紗香は体を起こして、ひとり呟いた。

……いい雰囲気、ぶちこわし……

でも、それが塚原らしいと思えてくるから、相当自分も塚原に溺れているのだな、と自覚する。
可笑しくて、自然と幸せな笑みがこぼれた。


※次回短編小説は4/28(金)更新です。お楽しみに!

★【連続官能小説】>>
『鼓膜で感じさせて 第一話「声の誘惑」』
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『「官能小説」に関するまとめ』はコチラ!


▼ライター:緋鹿 折さんプロフィール

緋鹿 折さん

某国立大学理学部卒業。医学博士。

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