【恋愛とセックスのかけ算/35歳 舞夏の場合】第2話 結婚のメリット

2001.01.01

会社の帰りにドラッグストアで2種類の日焼け止めを買う。SPF50。これ以上、肌が老化するのは怖い。イツキはオタク系アイドルグループの動画をよく見ている。きっとピチピチの若いのが好きなのだと舞夏は感じていた。
アイドルグループの動画、舞夏は歌など聴かず必ず肌をチェックする。全員真っ白だ。そして敗北感を感じる。シミもほくろも無縁の肌。影になる部分はひとつもない。
コンシーラーでカバーしても微妙に気づくのが女目線。彼女たちの肌は完璧だ。若い娘の頬は、太陽光線すら跳ね返すだけの威力を持っている。
家に着くと、まっすぐ洗面所に向かう。上半身ハダカになり、背中を鏡に映してみる。
「ああ、みにくい。茶色の斑点…」
イツキはバックスタオルが好きだ。だから舞夏は絶対に照明は付けない。ベッド脇のスタンドの小さな灯りですら消す。
舞夏はついでにショーツも脱ぎ、お風呂場にある全身鏡の前に立つ。
子どもを産んでいないので、乳房はまだ垂れてはいない。ただ乳首の色はとてもピンクとはは言えない。ため息をひとつつく。アンダーヘアの毛並みが揃っていなくてボテっとして見えた。
ヘアにホイップ洗顔料をつけ、レザーで整えた。叶姉妹のように蝶々の形にはならないが、細長い楕円形にし、割れ目に沿って剃り上げた。シャワーをあび、綿のワンピースをストンと着る。下着をつけずにキッチンに向かった。
日曜に作って冷凍しておいたロールキャベツをコソメスープで煮る。近所にできたワインショップで買ったワインを鍋に少したらす。イツキが帰ってきた。
「ただいまー。営業部の川島さんに誘われたけどさあ、説教くさいおっさんだから、逃げてきたよ。今日は妻と約束があるんでって。結婚してるといいよな。言い訳がなんでもとおるし」
舞夏はワイングラスを持って先に一口飲んでいる。
「結婚のメリット、ほかに何があると思う? 上司の誘いを断れる以外に…」
イツキは手を洗いながら考える。
「うーん、生計が折半で助かる。家賃も電気代も。あと、病気の時、食いもんに困らない」
「現実的ねえ。ほかには?」
「ええと、退屈しない…ってか寂しくない?」
「寂しくない、はいいわね、ロマンチックな回答。75点」
「舞夏は何がメリット?」
舞夏は手を洗っているイツキの背後に周りこみ、うなじに舌を這わせる。
「おい、メシは…」
イツキの右手を掴み、スカートの中に導く。「まじかよ。パンツ、はいてない」
「ふふ。それに、ちょっと見てよ。カットしたの。すっきりしたわよ」
スカートを自分でめくる。
(つづく)
▼ライター:三松真由美(みまつまゆみ)さんプロフィール
恋人・夫婦仲相談所 所長 (すずね所長)・執筆家
夫婦仲、恋仲に悩む女性会員1万3千名を集め、「結婚・再婚」を真剣に考えるコミュニティを展開。性を通して男女関係をよくするメソッドを考案。「セックスレス」「ED」「女性性機能」に詳しい。
恋愛・夫婦仲コメンテーターとして活躍中。講演、メディア取材多数。20代若者サークルも運営し未婚世代への結婚アドバイスも好評。ED診療ガイドライン作成委員。セックスレス改善に定評がある。

