【恋愛とセックスのかけ算/27歳 里衣菜の場合】第9話 浮気度100%男

2001.01.01

家に帰ってからジュンカにLINEをする。
「鍼灸院で二人きりになった。針もしてもらった。下着姿で抱きついてみたけど、逃げられた。これって?」
「めずらしいー男。ガチ草食?」
「元カノと別れた理由もそれっぽい」
「でもイケメンで鍼灸の院長ならいいじゃない。セックスは外ですれば。不動産屋はセフレになってくれるでしょ」
里衣菜は肩を落とす。
永野にいろいろ教えてもらい、男の人と一緒に気持ちいい部分を見つけることが好きになったのに。
男の人をいい気分にさせる技も磨いたのに。
柳田と付き合うことになるとネットや雑誌でよく目にするセックスレスになってしまうかもしれない。
柳田は里衣菜に好意を持ってくれていることはわかったから喜んでいいはずなのだがなにか心が弾まない。
鍼灸院の診察券を見つめてため息をついた。
翌週の水曜日、永野が深大寺にドライブに行くから半休取れと誘ってきた。
里衣菜の部屋で抱き合うだけの関係が長く続いていたので里衣菜は驚く。
外で会うなんてどういうことか。
境内は緑が多く、平日というのに参拝客で賑わっている。
(c) istockphoto.com
ちょっとした観光気分になる。
子供と手をつないだ若いパパとママもいる。
結婚っていいな、家族ほしいな、里衣菜はあらためて思う。
隣を歩いている男は……パパにはならないだろう。
なったとしても女をとっかえひっかえ漁って、里衣菜は家で泣くはめになりそうだ。
参道を歩きながら永野に尋ねる。
「ねえ、知り合いに見られたらまずいでしょう。お客さんとデートとか……こういうことしちゃいけないんだよね」
「遊びでエッチしたらまずいけど、マジで結婚するなら会社は文句言わないよ」
さりげに永野が返す。
「なんて言った?」
「里衣菜ちゃんの部屋でばかり会う関係はやめて、まじめに付き合いたいって思い始めた」
里衣菜は歩く足を止める。
「まじで?」
「まじ」
「あり得ないっしょ」
「なんで?」
なんでと聞かれても答えに困る。
あり得ないと思っていた。
エッチだけの関係と割り切って部屋に入れていた。
精力絶倫、浮気度100%男。
まさに肉食男。
そんな男が見せたマジ顔に里衣菜は天地がひっくり返ったような衝撃を受ける。
お寺の神様が永野に冗談を言わせたのかもしれない。
何度も身体を重ね合い、いい気持ちにさせてくれた男。
もちろん嫌いではない。
むしろ好きだから抱かれてきた。
とても人に言えないようないやらしい姿も見せた。
指示通りに変態的なこともした。
それは永野のことを好きだったから。
でも遊びだけの男だと言い聞かせていた。
(つづく)
▼ライター:二松まゆみさんプロフィール
恋人・夫婦仲相談所所長、通称すずね所長
元主婦マーケティングの会社経営。
夫婦仲に悩む女性会員1万2千名を集め「ニッポンの結婚・夫婦仲」を真剣に考えるコミュニティを展開中。「ED」「セックスレス」「アンチエイジング」「再婚」「若い世代のエッチ」などのテーマを幅広く考察。
マスコミ取材も多く、恋愛・夫婦仲コメンテーターとして着実に歩んでいる。日本性科学会会員。ED診療ガイドライン制作委員。
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