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連続官能小説『三日月の夜、星になりたい』第2話~王子様とのセックス~

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2018.10.25

好きな人を見送る茜と、呆れる美知留

オフィスの室温は快適とは言い難い。冬場は乾燥、夏場は冷え過ぎ。美知留はブランケットで膝をくるみ、着圧ソックスを履いてデスクワークをしている。それでもふくらはぎがむくむ。

美知留はきれいな足になりたいと十年以上悩み続けている。隣の席の寺本茜がホットレモンをすすりながら小声で言う。

「クールビズとか言ってもじっとしてると寒いよね。外回りから帰ってきた人達は冷えきった場所に逃避したいしね。ま、うちら事務職はキンキンに冷えた部屋で凍えながら単純労働するしかないわ

また愚痴っている。茜とはこの家具メーカーに入社して以来、同僚としてそこそこ仲良くしている。だが美知留は茜のことを100%好きではない。

茜はボサッとしたボブヘアで化粧気がない。手入れをしているとはいえないくすんだ肌。常に不満しか見えない眼鏡で世の中を見ているような細い目。何かと言えば不平を吐き出す薄い唇。

物事を後ろ向きに考える。新しいことには絶対に取り組もうとしない。新規プロジェクトの企画募集があっても「どうせ出来レース」と言って斜めから見る。

入社二年目に気になる人が現れたと教えてくれたが「私みたいな地味ブス相手にしてくれるはずない」と、頭からあきらめている。「茜の唇さ、カサカサじゃない。美容液でかわいくしてみなよ。ぷっくり唇になれるよ。気になる先輩にアピールしてみて。これプレゼント。」と愛用のキス専用美容液をプレゼントしたが使う気はまったくない。

美知留は女子好みのメイクアイテムが大好きだ。気に入った香りがついているとその日一日、いい気分になる。だが茜にはそんなかわいらしい感覚が少ないらしい。

以前、同僚の送別会で茜とその彼が二人きりになるチャンスがあった。美知留は腕をつついて「チャンスよ。一緒に帰れば」とけしかけた。茜はただ彼を見ているだけで何もしなかった。

好きな人を見送る茜と、呆れる美知留

「せっかくチャンスだったのに、なんで行動しないの?」

「チャンスなんて、こぎれいで計算高い女たちがみんな持ってっちゃうの。目も小さくて肌がきたない私には、恋のチャンスはありえない

美知留は茜の自虐的な夢がない言葉を聞くたびに自分も暗い穴にひきずられそうだと思う。重たい空気が肩にのしかかる。茜のネガティブ攻撃を浴びた日は、茜と正反対の友達、谷瀬理帆に連絡を取ることにしている。

理帆は中学高校の同級生。老舗の乾燥食品会社の四代目の父を持つお嬢様だ。一人っ子なので大人びた美知留に甘えるのが心地よいらしい。庶民的な生活がめずらしかったのかずっと美知留の家にいりびたっていた。

大学は違っても、暇さえあれば会うほどの親友。理帆は親のコネで飲食チェーンの本部で秘書として働いている。社員割引や優待券を使い、食事はいつも理帆のおごりだ。

今日も理帆と洒落たダイニングバーで魚介のカルパッチョをつつきながら白ワインを飲んでいる。

女子会をする美知留と理帆

「ああ、イライラする。茜のやつ、ほんと女捨ててる。あれじゃ一生独身だわ。てか、一生処女だ

理帆がきれいな栗色に染められたロングヘアをハラっとゆらして美知留の唇にオリーブの実を入れる仕草をする。ゆで卵の白身のような頬。パチっと瞬きするたびに金粉を振りまいているのではないかと思うほど長い睫毛。

「みっち、いつも茜ちゃんのこと怒ってるくせに友達やめないのは、心の底では好きだからだよ。なんとかしてあげたいと思ってる。茜ちゃんがきれいになって彼氏できればいいなって思ってるんだよ。フフッ」

「やめてよ。何笑ってんの。理帆は社長とか専務とか、上層部の人たちとしか顔合わせない環境だからわかんないのよ。嫌な奴とも笑い合って働かなくちゃいけない狭い世界が。ほんと、会社つまんないんだから…茜のおかげで一層暗くなるし」

「そかそか。そうね。茜ちゃんよりまず彼氏欲しいのはみっちよね。私なんて親が決めた男としか結婚できない立場だから、こっちからは本気で好きにならないようにしたもんね

理帆はちょっぴり悲しそうに眉尻を下げてオリーブの実を頬張る。笑ってもすねても絵になる女。足も美知留より一回り細く、膝頭がかわいらしい。

美知留は理帆の美しさはどうあがいても手に入らないと感じている。だが、モテるのに自由に恋ができない息苦しさを理帆は抱えている。神様はちょっとしたアンハッピーをみんなにふりかけるのだ。

美知留は理帆の細い髪の毛を撫でて耳元でささやく。

「だから、結婚を前提とした付き合いじゃなかったらって前置きして、疑似彼氏つくってるの?

「そだよん。でもね一応恋はしてるのよ。好きじゃなくちゃできないよ。セックスは。見合いする相手はカバさんみたいにおっとりして色気もなにもない人か、お金大好きの社長のお坊ちゃまばっかり。せめて結婚するまでは美しい王子様のような男とむくわれぬ恋をしながら睦み合うの」

「むくわれぬ恋かあ。私が理帆の立場なら…やっぱカバさんと結婚する前に王子様に抱かれたいかもね

「みっち、二人しか経験なかったよね」

「うん。しかも、どっちも最悪。思い出させないで」

「セックスってさ、おとぎ話に出てくる王子様みたいに美形の男だから気持ちよくしてくれるってわけじゃ ないのよ」

それって、うちのおねえちゃんもおんなじこと言ってたな。でもそう言うなら、カバさんみたいな男の人と結婚してもだいじょぶよ。エッチがよければ好きになるでしょ」

理帆と終電まで、こんな人とセックスしたいというトークで盛り上がった。

(つづく)

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●イラスト:フジワラアイ

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▼ライター:三松真由美さんプロフィール

三松真由美さん

恋人・夫婦仲相談所所長、通称すずね所長・コラムニスト

元主婦マーケティングの会社経営。
夫婦仲に悩む女性会員1万2千名を集め「ニッポンの結婚・夫婦仲」を真剣に考えるコミュニティを展開中。「ED」「セックスレス」「アンチエイジング」「再婚」「若い世代のエッチ」などのテーマを幅広く考察。

マスコミ取材も多く、恋愛・夫婦仲コメンテーターとして着実に歩んでいる。日本性科学会会員。ED診療ガイドライン制作委員。著書「新・抱かない男の見分け方」(スターツ出版)他多数。

▼三松真由美さんのサイトはこちら

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